株主通信 TRIPLEIZE EX-press 2022.12 update.

トップインタビュー

創業者・福原智の
目指していたもの

オープンイノベーションの
磁場「IT批評」

  • 株式会社トリプルアイズ 代表取締役

    山田 雄一郎

    1982年生まれ。早稲田大学商学部卒業。在学時の公認会計士試験合格を経て、2005年12月EY新日本有限責任監査法人入社。2011年3月監査国際部より異動し、成長戦略室等にて官民連携の経営改革に係るコンサルティングを9年間実施、多数のプロジェクトマネージャーを歴任。2020年11月株式会社トリプルアイズ取締役就任。2021年3月同社代表取締役就任。

テクノロジーは想像力の乗り物

当社は「テクノロジーに想像力を載せる」を経営理念に掲げています。テクノロジーとは私たちの想像力を未来へと運んでくれる乗り物です。創業者・福原智が「言葉で説明されたことを全てシステム化できる」と言っていたように、想像できることは必ずテクノロジーに結晶していきます。私たちはテクノロジーだけの企業ではありません。豊かな想像力をもつ集団なのです。理念には、そういう強い思いが込められています。

当社の経営理念について

システムインテグレーションと
AIの両輪

当社事業はAIソリューションをドライバに、SI(システムインテグレーション)部門とAIZE(アイズ)部門の両輪で展開しています。
SI部門は、基幹システム・決済システムなどの開発を中心に、金融、流通、不動産、サービス、医療等のさまざまな業界において実績を有しています。通信、流通、金融など多様な業種において、基幹システムからインフラ構築までのあらゆるプロジェクトに携わっております。こうした環境は、エンジニアにとってはさまざまな実践的な経験を積みながらスキルを磨く場ともなっています。
AIZE部門では独自開発したAIエンジンによるサービスを展開しています。画像認識プラットフォーム・AIZE は、顔認証、画像認識を行うソリューションとして、流通小売業を中心に店舗や工場など、業種・業態を問わずサービス提供を行っています。なかでも顔認証については、正面静止画像であれば認証率99%超という高精度を誇ります。AIZEは豊富なサービスレイヤーを備え拡張性に優れており、既存システムに即したカスタマイズも可能です。
近年は、SIとAIZEの両部門にまたがるプロジェクトの引き合いも増加しており、より本格的で大規模なAIソリューションの提供も視野にいれて事業推進しております。

苦難をチーム力で乗り切った
2022年8月期

第14期(2021年9月1日〜2022年8月31日)は、創業者である福原智が念願としていた株式上場を果たし、当社が新たなステージへと移行した記念すべき年となりました。
上場に向けたこの1年間で、部門間の連携を図り、有機的な組織、自ら学習する組織へと成熟を遂げたと思います。カリスマ的なトップを失ったなか、組織としての成熟と個々のメンバーの成長がなければ1年でここまでの成果を得ることができなかったと思います。当社が苦難に負けないチーム力をもつ企業である証明だと信じています。
業績では、SI部門の安定的な経営基盤を維持しつつ、AIZE部門のプロダクト販売、カスタム開発が順調に成長し堅調に推移し、10年連続増収を実現しています。

優秀なエンジニアが
育成される土壌をもつ強み

当社の強みは「技術力と社会実装力の二刀流」と表現しています。未来を創るAIベンチャーと、現在を支えるSIerを両輪にできる企業は多くはありません。AIシステムを開発して終わりではなく、本当に使えるようになるまで客先の現場で徹底的な運用支援を行うことが、研究開発系ベンチャーには難しいからだと考えています。ここにSI部門で培った長年の経験が生きています。
技術力の根底にあるのが「囲碁AI」の研究です。ディープマインド社のアルファ碁がプロ棋士に勝利したことで、第3次AIブームは広がりました。きっかけとなったイノベーションはディープラーニングですが、それのみならず探索木など50年以上に亘って成熟してきた技術も不可欠です。囲碁AIは自動車にとってのF1レースのように、AI技術の最先端を競う場でもあるのです。当社は第3次AIブーム以前より囲碁AIの研究をしている、日本企業ではほとんど唯一の存在です。2019年には、共同参画したチームが囲碁AI 世界大会で2位の実績を残しています。
現在、多くのIT企業がエンジニア不足に喘いでいます。これからもそれが続くでしょう。そんななか当社には、SI部門の多様な現場のなかで技術を身につけ、AIの先端テクノロジーによってハイスキルなプロフェッショナルに育つ環境があります。SI部門では、プロジェクトマネジメントやコンサルティングなど、ITビジネスのスキルを磨くことも可能です。また、自社でAIエンジニアの育成プログラム「AT20」を運営していることも特徴です。
優秀なエンジニアを育成してきた土壌が当社の最大の強みといえるでしょう。

トリプルアイズ・ブランドの確立

第15期のスタートにあたりSI部門とAIZE部門を統合し技術本部を設立しました。その狙いは、AI開発とシステム構築をシームレスにつなぎ、当社のエンジニアの総合力を発揮するためです。AIソリューションを研究、開発、事業化、そして産業化というフェーズに沿ってマネジメントする技術経営に則った戦略を基本としております。
総合力を発揮することで、トリプルアイズ・ブランドの確立を目指しております。そのためには技術本部のみならず、営業本部、広報マーケティングと連携し、戦略的な市場進出、市場開拓を進めます。部門を横断する会議体を設定し、経営判断の迅速化、開発リソースの最適化、全部門の生産性向上を促進しています。組織全体がトリプルアイズ・ブランドの確立に寄与しうる目標を設定し、経営層から一般社員にまで共有しており、個々が最適な判断と行動をとることができる組織になっています。
当社の技術やエンジニアに関するその独自性、優位性を誇示するトリプルアイズ・ブランドこそ、社内外にとって最も価値があり、今後の戦略の根幹にあるものです。

2022年8月期の業績および今後の戦略について詳しくは、決算説明会動画をご覧ください。

決算説明会動画

代表・山田のこれまでの経歴

  • 札幌で生まれ、親の転勤でいろいろな土地で生活をしてきました。北海道から千葉県、兵庫県、滋賀県と引っ越しを繰り返し、中学校3年生からは東京都で暮らしています。そのため当時は、友達付き合いの難しさを感じて辛い思いを度々していました。ただ、サッカーをずっとやっていたので、それが共通項となりました。今となっては環境に合わせ対応していく力を学ぶことができたのではないかと感じています。

    経済界の医者となることを目指して、早稲田大学在学中に公認会計士の資格を取得し、新日本監査法人(現・EY新日本有限責任監査法人)へ入所しました。最初は監査部隊として勤め、その後アドバイザリーコンサルタントとして、省庁・自治体などのパブリックセクターに向け、制度改革・経営改革に係るアドバイザリーサービスを提供していました。また、会社の外の個人活動として、海外NGOのプロボノや公益団体の役員を通じて新事業立ち上げやガバナンス改革にも携わってきました。

トリプルアイズに入社したのは、創業社長である福原智との出会いがきっかけでした。私は、前職で15年間、日本の企業や政治を取り巻く社会構造の課題を解決するプロジェクトに携わるなかで、ITエンジニア人材の必要性を強く感じていました。そんななか、ITエンジニアを束ねる福原から「テクノロジーの力で、その壁をぶっ壊していきたい」という熱意とパワーを感じて「一緒に挑戦しよう」とジョインしました。

代表就任から上場まで

2021年3月5日に、福原が急性大動脈解離で急逝し、当日、緊急招集した執行役員、取締役の全員一致で代表に選任されました。上場を目指すという創業者のミッションを引き継ぐことになったのです。「福原の思いを継いで目標を実現させる」と決意しました。
上場直前に創業者が亡くなる事態はこれまでに前例がなく、代表就任後には、14年間会社を支えた社長がいなくなったことによる弊害があるのではないか、というような質問もいくつか受けました。悲しみのさなかにはありましたが、社員は一致団結していました。また、福原は上場しパブリックカンパニーとなるために権限委譲も進めていたので、取引先からの信頼やサービス品質も維持することができ、さらなる成長をとげ、無事、2022年5月31日に上場を実現しました。

仕事をする上で
大切にしていること

座右の銘は「無知の知」です。哲学の父とも呼ばれるソクラテスが提唱した言葉で、自らの無知を自覚することが真の認識に至る道であるという哲学的概念を表しています。私は今までを振り返ると、幼少期から転校が多かったり、急に社長に就任したりと、大きな環境の変化が頻繁にありました。新しい環境に移れば、自分の手持ちの知識では対応できない状況に直面します。どのような場面であっても、この「知らない」ということを自覚し、それまでの常識に固執せず探求心を持ち続ける姿勢が非常に大事だと感じています。

株主・投資家の
皆さまへのメッセージ

前期は上場というステージに上がりましたが、ここは次の新たなステージに向けての通過点でしかないと捉えています。当社の強みである「技術力と社会実装力の二刀流」にさらに磨きをかけ、新たなイノベーションを創出することで成長を続け、企業価値の向上に向けて一層の努力を重ねてまいります。
株主・投資家の皆さまにはさらなる成長を目指す当社へ引き続きご期待いただき、変わらぬご支援を賜りますようよろしくお願いいたします。

  • CONTENTS.01
  • 創業者・福原智の
    目指していたもの
  • 受け継がれるエンジニア魂

A.大好きだった将棋盤を前に
B.著書『テクノロジー・ファースト なぜ日本企業はAI、ブロックチェーン、IoTを牽引できないのか?』(朝日新聞出版)

2008年9月に産声を上げたトリプルアイズは、今期15年目を迎えます。創業者である福原智は、フリーのエンジニア時代を経て、日本のIT業界においてエンジニアを疲弊させるだけの不毛なゼネコン体質に憤慨し、日本の優秀なエンジニアの力を世の中でいかんなく発揮させるために自ら起業しました。
福原は、ITが持つ力の本質を「情報を扱うテクノロジーを駆使したビジネスで、世の中をより良く変える、より豊かに変えるもの」と定義しています。2014年に囲碁AIの研究をスタートさせたのは、そこにテクノロジーの未来を考える手がかりがあると直感したからに他なりません。名だたるグローバル企業を相手に戦いを挑むことは無謀とも思われましたが、チャレンジしなければ技術力を高めることはできないというのが、エンジニアたる福原の一貫した信念でした。囲碁AIの研究開発はその後、トリプルアイズの成長を牽引する画像認識プラットフォーム・AIZEとして結実します。
2021年3月、福原智は念願であった株式上場を見ることなく急逝しました。
現在、トリプルアイズの中核を担うエンジニアたちの多くは、向日的な思考で未来ビジョンを語る福原の人柄に惹かれて入社しています。2018年に上梓した『テクノロジー・ファースト』(朝日新聞出版)に感銘したお取引様や学生時代に読んで入社してきた社員もいます。
福原は生前、「トリプルアイズにはお客様が“こうしたい”と言葉で説明していただければ、それをすべてシステムにできるだけの技術力がある」と社員を励まし続けました。それがトリプルアイズのエンジニア魂として社員の胸には宿っています。
「次代の日本の産業と社会を牽引するのは、ITが持つ力を信じている私たちだ。」著書に書かれているこの力強い言葉を噛み締めながら、トリプルアイズは前に進んでまいります。

  • CONTENTS.02
  • オープンイノベーションの
    磁場「IT批評」
  • 先端テクノロジーの
    知見が交わるオウンドメディア

トリプルアイズでは、WEB上のオウンドメディア「IT批評」を運営しています。「IT批評」は2010年に活字メディアとして創刊され、情報テクノロジーの変遷をフォローし、考察を加えてまいりました。発行元である眞人堂がトリプルアイズにジョインしたことにより、2021年5月よりトリプルアイズのオウンドメディアとしてWEB上で記事を配信しております。

“ITの視座から時代と社会、ビジネスの本質を対象化するメディア”というコンセプトを掲げ、社内外の知見の新結合を目指しています。科学者、研究者、エンジニアといった専門家との対話からテクノロジーの可能性を深掘りするとともに、大学教授や作家、ジャーナリスト、経営者などがテクノロジーと社会についての新たな視点を提供しています。
「IT批評」は、テーマに即した的確な人選と長期視点からの考察が特徴的で、しかもすべてのコンテンツがオリジナルであり、他のメディアにはない読み応えのある記事として、学生やビジネスマン、投資家の皆さまから評価されています。
「IT批評」は、トリプルアイズの“想像力”を担保する事業推進の羅針盤として機能しています。今後も新たな結合(イノベーション)を誘発する論考を発信してまいります。

IT批評

「IT批評」にインタビューで
登場いただいた識者の方々

  • 松原仁氏(東京大学次世代知能科学研究センター教授)
  • 村上憲郎氏(元Google本社副社長兼日本代表)
  • 井上智洋氏(駒澤大学経済学部准教授)
  • 榎本幹朗氏(作家)
  • 崎村夏彦氏(東京デジタルアイディアーズ主席研究員)
  • 川添愛氏(作家)
  • 谷合廣紀氏(棋士)
  • 辻井潤一氏(産総研人工知能研究センター長)
  • 岡嶋裕史氏(作家、中央大学国際情報学部教授)
  • 竹村彰通氏(滋賀大学データサイエンス学部学部長)
  • 浦﨑忠雄氏(メハーゲングループ代表)
  • 小笠原康貴氏(ソニービズネットワークス株式会社代表取締役社長)
  • 田中優成氏(株式会社アクリート代表取締役社長)
  • 川崎哲郎氏(アクロニス・ジャパン株式会社代表取締役社長)