CASE STUDY - 事例

世田谷区様

大規模自治体で初、世田谷区がAI顔認証を勤怠管理に採用
人事課担当者に聞く自治体DXの実情

従業員の勤怠管理AIZE Biz

    2024年8月、世田谷区では、会計年度任用職員(従来の非常勤職員やアルバイト職員に相当)に顔認証による出退勤管理システムに「AIZE」を採用し運用を開始しました。

    世田谷区の本システム導入拠点は本庁舎をはじめとして、保育園や学校、図書館など約400カ所(端末446台)にわたります。対象となる職員数は年間を通じて約5,000~5,400人の範囲で任用されており、年間の延べ任用人数は約6,400人を予定しています。約3カ月の要件定義・開発・構築期間を経てのシステム稼働でした。

    運用開始より3カ月を経て、導入に至った経緯や導入効果、さらに自治体におけるDXの課題について、世田谷区人事課係長・鈴木さん、人事係・中村さん、人事係・白石さんにお話を伺いました。

    世田谷区人事課の鈴木さん(左)、中村さん(中)、白石さん(右)

    聞き手:トリプルアイズ広報・土田修
    取材:2024年10月17日 世田谷区庁舎にて

     

    〈世田谷区データ〉
    面 積:58.05km2
    総人口:944,155人(2024年9月1日推計)
    区 長:保坂展人

    世田谷区は面積では23区で2番目の広さを誇り(1位は大田区)、人口はトップの94万人余りというメガ自治体です。都道府県と比較しても10個の県より人口が多く、市区町村人口ランキングでは13位、市を除く区町村レベルでは全国1位となっています。(令和6年4月1日現在)

     

    「顔認証システムの打刻のしやすさを評価」

     

    ■勤務形態の「枠」という概念がなくなりつつある

     

    ――100万人近い住民にサービスを提供するということになると、職員数もかなりの数に上りますね。

    中村氏 そうですね、正規職員で5,000人、会計年度任用職員いわゆる非常勤についても5,000人規模で、合計1万人ほどの職員を抱えているという状況です。

     

    ――今回、会計年度任用職員(以下、非常勤職員)の勤怠打刻に顔認証を採用されたわけですが、常勤職員の方々の勤怠管理はどういったかたちで行われていますか。

    中村氏 常勤職員に関しては、いわゆる庶務事務システムの特別区仕様のパッケージがあるので、そちらを活用しています。職員証のICカードで出退勤の打刻を行っています。パッケージのソフトと連携していて、システムのなかで休暇を申請して、システムのなかで決裁をするかたちです。

     

    ――では、常勤職員の出退勤に関してはDXが進んでいるというイメージでしょうか。

    鈴木氏 現状はそれで回っている状態ですが、今後に向けては、なかなか今のままでいいとはと言い切れません。たとえば、勤務形態の多様化があります。今だと常勤職員は基本8時半から17時15分っていう「枠」で勤務していますが、今後、フレックスタイムが導入されてくると、今までの勤務形態の「枠」という概念がなくなります。それに対して、今のシステムだと管理できないということが、現状の課題としてあります。

     

     

    ■紙の管理からの脱却という課題

     

    ――働き方改革の文脈で、いろんな勤務形態が出てくるということですね。一方で、非常勤職員の方はこれまでどんなかたちの勤怠管理だったんでしょうか。

    中村氏 非常勤職員は紙の出勤簿を利用していました。そこに出勤時間と退勤時間を記載します。職員本人が自分の時間を書き、それを所属長が現認するというかたちで、出退勤の管理を行っていました。非常勤職員は、保育所であるとか学校であるとか図書館であるとか、勤務する現場はさまざまなんですが、それぞれの配属先で紙での管理を行なっていた状態です。

     

    ――ちょっと考えただけでも、管理が大変そうですね。それを人事課の方たちが回収してexcelに打ち込むのですか。

    中村氏 いえ、特段データへの転記は行っていなくて、単純に回収をして保存していました。何か過去に遡って見る必要があったときには、紙をとりだすようにしていました。労働者の勤怠管理は使用者としての責務でもあるわけですから、客観的に記録できるシステムの導入は、早急に取り組むべき課題でした。

    中村さん

     

    ――常勤職員の勤怠システムをそのまま非常勤職員にも使うわけにはいかないんですか。

    白石氏 検討の俎上には上がったんですけれども、常勤職員であれば、フルタイムの任用が基本ですので、8時半から17時15分という、ほぼ決まった枠組みで管理ができます。一方、非常勤職員については、1日のうちの勤務時間からしてバラバラで、4時間勤務の方がいたりとか、6時間とか7時間勤務の方がいるわけです。さらに、その勤務時間の割り振り自体も、7時からの方もいれば8時からの方もいるし、午後から出勤する人もいる。それが5,000人ということで、多種多様なパターンがあるなかで、それを常勤職員用のシステムで管理するのはかなりハードルが高いということをベンダーからも聞いていまして、なかなか一筋縄ではいかなかったわけです。

     

     

    ■顔認証打刻が評価されたのは登録の容易さ

     

    ――8月からAIZEを導入されて、の出退勤もデジタル化して管理するようになりました。最終的なゴールは、どこを目指していますか。

    中村氏 そうですね、現在はまだ給与に反映させるための実績の入力は担当者が別システムで行なっていますので、出退勤管理に加えて、休暇申請から給与システムの連動も含めてトータルでできるようになるというのが最終的なゴールだと思っています。

     

    ――今回、AIZEを導入されましたが、顔認証での打刻方法に決められたのはどういう理由からでしょうか。

    鈴木氏 今回のソリューション設定にあたっては、プロポーザル方式を採用しています。こちらが提示した標準的な仕様書に対して、企業から提案をいただいて、審査員の方が点数をつけて、総合点が高い企業と契約をするような方式です。そのなかで、今回トリプルアイズさんからご提案いただいた顔認証システムが、打刻のしやすさや登録のしやすさが評価されて採用に至りました。世田谷区側から、顔認証が必須だとか指紋認証の方法がいいとか、目標があったわけではありません。あくまで、非常勤職員の勤怠管理にどの方法がふさわしいのかという観点から、複数社の提案の中から選定させていただいた状況です。

     

     

    ――顔認証については、世田谷区ではすでに何かで使っていたのですか。

    中村氏 パソコンのログインを顔認証でやるのは、全部ではありませんがすでにやっていました。そういう意味では、導入に際して大きな抵抗はなかったと思います。個人的な意見になりますが、顔認証での打刻が評価に至った理由としては、登録の容易さが挙げられると思います。非常勤職員の場合、1年に満たない短期間だけ勤務する方がいるので、その度にICカードを発行するのは非効率です。また、生体認証のために指紋を登録してもらうのも、ハードルがあります。顔認証の登録が1番やりやすいという印象です。

     

    ――カードだとどうしても紛失する方が出てきます。

    白石氏 常勤職員でもカードの紛失に関する管理業務は結構煩雑で、なんとか解決したいと思っていました。今回のAIZE導入で顔認証打刻が浸透してくれば、状況改善につながるのではないかと期待しています。

    1 2 3