株式会社新井精密様
埼玉県秩父市の株式会社新井精密の工場
背 景
精密部品加工の分野でDXのリーディングカンパニー。
コロナ禍も多品種小ロット対応で堅調
株式会社新井精密(埼玉県秩父市/代表取締役 新井利幸)は、1978年埼玉県秩父市で創業。当初は家族経営でのスタートだったが、徐々に規模を拡大し、現在は新装なった二つの工場を持ち、従業員数は86名(派遣社員を含む)を数える。
精密部品加工で卓越した技術ノウハウを活かし、自動車部品をはじめ空圧機械部品や医療機器部品、電子機器部品など、幅広い分野で高品質・高精度の金属加工を行っている。
工場内には、最新鋭のNC自動旋盤を含む約70台の機械をラインナップ。多彩な機能を持つマシンと長年培った技術、高精度の検査体制で、難易度の高い複雑な形状や難削材加工の注文に応える。顧客の要望にスピーディーに応えるため、生産の自動化と365日・24時間稼働を実現しており、多品種少量・短納期・低コストを実現する生産管理システムを追求する。
なかなかIoTやDXが進まない基礎部品加工業界において、同社は積極的にIoTやBCP(事業継続計画)に取り組む業界のリーディングカンパニーとして、たびたびメディアにも取り上げられている。
IoT時代に対応した生産管理システムではQRコードによる管理で生産設備と工程の見える化を推進、製品検査ではミクロン単位の精度要求に応える品質検査体制を構築している。
特に自社で3年前に開発した生産管理システムでは、NC旋盤一台一台がIoTで繋がり、ビッグデータを収集して解析する。同社では多種多様な部品を手掛けているので、QRコードによるシステム管理が必須であった。「いつ・誰が・どの機械で作った・○という部品が」「どの工程に・いくつあるのか」といったことがリアルタイムでクリック一つで把握できるようになっている。
コロナ禍においては、クライアントである自動車工場の操業がストップしたりと、全く影響がなかったわけではないが、多品種小ロットの注文に対応できる体制ができていたことがリスクヘッジになり、売上減をカバーすることができた。2021年も、緊急事態宣言が再発令されたのとは裏腹に業績は堅調である。
最新鋭のNC自動旋盤機の前に立つ新井利幸社長
課 題
・感染させない、工場を止めない−−そのための方策を模索
・従業員の自己申告では従業員の安全を守れない
・人材管理でAIによる「見える化」の必要性を痛感
新井精密では、2020年4月に1回目の緊急事態宣言が発出されると、政府の指針に従って、手洗い・うがい・アルコール消毒の励行、3密の回避、来客者にはガンタイプの検温機で検温、出勤者へは自宅で検温した記録を提出させる、などを対策として行ってきた。
テレワークは検査部門で一部実施したが、そもそも製造業は機械設備を中心に業務が回っており、工場に従業員が集まって仕事をするというシステムになっている以上、なかなか難しいところがあったという。
2020年の夏を過ぎた頃に、安全衛生の会議において、「本当に全員が自宅で検温してから出勤しているのか」と疑問が提出された。感染に対する緊張感が薄まった頃だが、放っておくわけにはいかない。対策をしないでクラスターが発生すれば、それは経営の責任になってしまう。
もう一つ新井社長が懸念したのは、「自分はきちんと健康管理して検温もしているけれど、そうではない人も職場に混じっているのではないか」「体調が悪くても無理して出勤している社員がいるのではないか」という疑心が従業員の心の中に芽生えはしないかということであった。
従業員に安心して働いてもらうことが、経営者としての一番の責任であると感じた社長は、従業員の自主性に頼らないで、簡易にしかも精度良く検温できるシステムを探し始めた。
そこには、検温だけでなく出退勤管理にも使えるシステムという条件が付け加えられた。同社ではコロナウィルス流行以前から、従業員管理システムへのAI導入も課題として挙がっていた。生産管理においては早くから「生産設備と工程の見える化」を推進していた同社であったが、コロナウィルスの流行を受けて、いよいよ人材管理においてもデータによる「見える化」の必要性を痛感したという。
導入の経緯
求めたのはクラウド対応とポストコロナにつながるAI活用
精密部品加工で最新鋭の機械を揃え、工場内のクリンリネスにもこだわる同社では、感染症から従業員を守るためにどうすればよいか複数社の自動検温機を検討していた。いち早くIoT時代に対応した生産管理システムを導入していた同社が求めていたのは、検温管理の「見える化」であった。
いくつかの候補を絞り込んで、特にクラウド上に記録を残せ、しかもどこからでもアクセスできるということで、AIZEに白羽の矢が立った。すでに新井精密では、出退勤はクラウド上のシステムを利用しており、外出先からも打刻できるようになっており、クラウド利用の便利さを身をもって感じていたので、そこは条件としては外せないところであった。
クラウド上に顔画像とともに検温記録が残るAIZE Biz+はその点では申し分ない。さらに、なるべく従業員の手間を省くこと、そして導入コストも重視された。何よりも決め手となったのは、AIZEの持つ拡張性にあった。AIZEの特徴は単機能にとどまらず様々な課題に応用されるところにある。当面は検温管理が主な使用目的だったが、現在は、勤怠管理システムとの連携が予定されている。コロナ後のAI活用を見据えての採用となったのだ。
導入オペレーション
AIZE Biz+の設置による従業員の感染症対策
新井精密では、工場2カ所とオフィス棟の入り口に計3台のAIZE Biz+を設置した。出勤した従業員は自動検温機の前を通り過ぎるだけで検温が完了する。その時点で設定温度(37.5度)を超えていれば、アラートが出て、従業員はその場に留まり、アラートメールが届いた総務の社員が駆けつけ、再度検温を実施して、問題なければ入館、熱があるようであれば出社を止める。またマスク着用をしていないで検温機の前を通ろうとする従業員にはマスク着用を促す表示と音声が出る。
AIZE導入 before&after
before
・従業員は自宅で検温した記録を上長に送付。上長がまとめて人事に報告
・来客者にはガンタイプの検温機で検温
・マスクの着用は目視で確認
・従業員の工数、精神的な負担が大きい
・本当に全員が検温しているのか不安が拭えない
After
・自動検温機の前を通り過ぎるだけで、従業員個別の検温記録が管理PCに
・来客者も検温と同時に顔認証。いつ、誰が来たのか顔画像で記録されるので、防犯上のメリットも
・マスクの着用はAIが確認
・従業員の負担が目に見えて減った
・安全な職場で働いているんだという安心感が従業員のパフォーマンス向上に直結
工場入り口に設置されたAIZE Biz+
お客様の声
株式会社新井精密 代表取締役 新井利幸様
「AIを活用したコロナ対策が、従業員と取引先へのメッセージになる」
ものづくりで心がけているのは、「他社が真似できない、自社の技術に特化した製品づくり」です。他社が引き受けないような難易度の高い仕事の受注を目指しています。そのためにいち早くIoTで生産工程の見える化に取り組んできました。
コロナが流行して、どうすれば従業員の安全を守れるのかを考えたときに、従業員の健康管理も実は生産管理と同様に見える化が必要なのだと気がつきました。
AIZEは非接触で検温でき、スピード認証かつクラウド上に記録が残り、運用の手間もほとんどかからないところが秀逸です。また短期間で導入できたことも助かりました。
AIZEを導入して良かったなと感じたのは、「従業員が健康的に働くことを会社は望んでいる」というメッセージを形として伝えることができた点です。
私には、従業員の貴重な時間を預かっているという意識があるので、その間の安全を担保する義務があると思っています。工場の主役は従業員です。安全面に考慮した環境整備を高いレベルで継続していくことによって、従業員は質が高く、お客様に喜ばれる仕事ができるのだと思います。
良い影響は従業員だけではありません。クライアントであるお客様が来社された際にも、会社としての安全衛生面への取り組みをアピールすることができます。お客様が工場をご覧になって、きれいな工場であるとか、最新鋭の機械を入れているとかと同じレベルで、安全面に配慮した会社だということを印象付けることができます。従業員の安全や健康管理に留意している意識の高い会社だなということを実感することで、安心して発注していただけるのではないでしょうか。
私は、会社も従業員も幸せになるのであれば、テクノロジーによる恩恵は積極的に受けていきたいと思います。
例えば、機械に任せられるものは機械に任せたい。そして従業員には、機械に任せた分、会社にいる時間を、自分自身の課題を解決するとか、お客様のリクエストに応えるにはどうすればいいのか工夫を凝らすとか、そういうことに使ってもらいたいと思っています。従業員が成長することが会社の競争力を高め、高品質の製品をお客様に提供することで、結果として我々は利益を得られるし、働く従業員も誇りを持つことができます。そのようないい循環を実現するためにも、テクノロジーに投資していくことは間違っていないと信じています。
拡張性の高いAIZEであれば今後もいろいろな展開が期待できます。勤怠管理については、タイムカードから磁気カードに移行していますが、紛失したり破損したりすることも多いので、次のレベルとして顔認証の導入を計画しています。
AIによる画像検知はこれからの生産現場では主流になっていくでしょう。非接触でのドア開閉、機械ごとの使用者認証など、画像認証の使い途は可能性に溢れています。こちらからも開発要望のアイデアを出していきたいと考えています。
会社プロフィール
会社名 株式会社新井精密
所在地 〒368-0061 埼玉県秩父市小柱670番地
従業員数 65名(平成31年1月現在)
事業概要 精密部品加工、自動車部品をはじめ空圧機械部品や医療機器部品、
電子機器部品など、幅広い分野で高品質・高精度の金属加工を行う
URL https://araiseimitsu.com/